介護士のホンネ

現役の介護士による、ここだけの話。

老人ホームの種類と介護士が教える優良な施設の探し方!特養と有料老人ホームの決定的な違いは?高齢者の快適な暮らしは最終的には職員が鍵

介護が必要な高齢者の方のために老人ホームを探すとしたら、何を重視しますか?特別養護老人ホーム・軽費老人ホーム・有料老人ホーム・サービス付き高齢者住宅・グループホームなど様々なタイプがありますが、この記事ではネットでは知ることのできない裏側の事情も含め、現役の介護士が良い施設の選び方をホンネでお教えします。

実際に住んでみないと分からない内情が分からない老人ホーム。施設の立地条件や入居費用、サービスの種類よりも、ココを見たらいい!という裏情報をたくさん書きますので必ず役に立つはずです。

優良な老人ホームと悪い施設の見分け方

介護士がホンネで教える優良な老人ホームの選び方|写真はイメージです(ぱくたそより)

老人ホームは寮が付いている学校と同じ

私は、お年寄りをお預かりする老人ホームというのは、学生寮が付いている私立の学校と同じような物だと思っています。

 

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自由に外出できなくて外から隔離された建物の中で、衣食住のすべてのお世話(介護サービス)が提供されます。

もちろん、ここ数年は介護業界では自立支援が叫ばれているので、昔は手取り足取り何でもヘルパーが行なうことが多かったですが、近年は自分でできることはご自分でやってもらうことが多いです。(介護業界では「残存能力を生かす」といいます)

それでも要介護の状態、特に認知症になると介護施設の職員のお世話になる部分が増えてきます。

学生寮であれば、電話するなどして子供から施設内の詳しい話を聞くこともできますが、認知症のお年寄りをいったん預けた後にはそうはいきません。

さらに、事前に入居を考えている施設の内部の詳しい事情を、ご本人や家族が知ることは極めて難しいものです。

ネット広告やパンフレットでどんなに良い施設や理念をアピールしていても、お年寄りが快適で安心して過ごせるかどうかは、現場で働く職員がどうあるかによると思います。

オリンピック開催の折に、首相も都知事も繰り返し「安心・安全な開催をします」と言っていましたが、国民の大半はそう感じていなかったのではないでしょうか。

虐待のない施設を選んで

老人ホームも同じで、施設のトップが唱える理想像と現場には温度差があるという事もあります。

残念なことに、認知症のお年寄りに日常的に虐待を繰り返す施設もあります。

というより、実際に多いです。

別記事で詳しく書きますが、そういった施設では心の荒れた介護士が利用者さんだけでなく、意図的に新人もいじめるのでどんどん辞めていきます。そうすることで、自分の立場を守る(解雇できない)ようにしているという事です。

大切なご家族のために、またご自身のためにできる限り優良な施設を選んでください。

このサイトは営利目的ではないので資料請求や見積もりボタンなどもありません。

安心してお読みください。

 

 もしかするとあなたは今、ご自身かご家族の方のために老人ホームを探しておられるのかもしれません。

あるいは、近い将来にその必要が生じることを考えて早めに情報収集をしておられるのかも。

インターネットで「老人ホーム」と検索すると、グーグルなどの検索サイトの広告設定で、まずトップページに広告費用を払っている介護施設検索サイトが紹介され、その下に自分の住んでいる住所の近くの老人ホームが自動的に幾つかピックアップされます。

たいてい、その中から費用立地条件などを考えながら理想的な施設を探していくことになりますが、ネットでは敷金・月額費用・入居条件・施設の環境・サービス提供の種類など、世間に公開されている限られた情報しか知ることはできせん。

ネットやパンフレットで得られる情報以外の「良い施設の探し方」を考えていきましょう。

その前に、いくつもある老人ホームの種類を簡単にご紹介します。

厚生労働省のサイトにも介護・高齢者福祉についての最新情報があるのでご覧ください。

老人ホーム選びで良い施設を選ぶコツ

老人ホームの種類

ひと口に老人ホームと言ってもさまざまなタイプがあります。料金もさまざまで、定額で利用できるものから高級な施設までいろいろ。中にはお年寄りを食い物にしようとする悪徳施設もあるのでご注意ください。

長くなるので、日帰りで利用するデイサービスやショートステイについては今回は省略します。

※参考までに厚生労働省による施設数などを書きますが、令和元年のデータです。

特別養護老人ホーム|公的施設の老人ホーム

正式な呼び方として介護老人福祉施設と呼ばれ、省略して特養ともいわれます。

社会福祉法に基づいて運営される非営利の法人「社会福祉法人」か地方自治体である行政機関しか作ることができません。

寝たきりの方も含めて、介護度が高い方向けの施設で、看取り(人生の最期)まで対応します。

利用条件について詳しくは、要介護3以上の方など介護保険法で決められています。要介護3以上の方が対象ですが、特例で1~2の方も利用可能。

病院の大部屋のように、1部屋にベッドが幾つもあるか、個別にパーテーションやカーテンなどで仕切られているような多床室のタイプが多く、公的な施設であるため一般的に有料老人ホームと比べると費用は安く済みますが、入居待ちが多くて通常はすぐには利用できません。

入居費用が安いので職員の給料も安く、スタッフの質も悪い場合があります。

自宅での介護からというりよも、介護度の低い方向けの施設から移動するパターンが多く、終身制の施設です。

全国に約8200施設ほどあり、定員数は57万人程度。

 

介護療養型医療施設

特養と似ている多床室が多い施設として、看護師を多く配置しさらに医療的な面でのサービスが充実している介護療養型医療施設というタイプもありますが、こちらは全国に833施設あります。

初期費用がかからず、月額での利用が可能ですが、病状などが改善したら退所しなければなりません。

有料老人ホーム|私立の民間の施設

介護付き有料老人ホームや住居型有料老人ホーム、グループホームがあります。

民間の会社が運営していることもあり費用は高めですが、特養とは異なり待機人数は少なめ、待ち日数も短いことが多いです。つまり早く入居できます。

費用には上限がなく、最も価格の開きが大きいです。

入居費用が1000万円を超えるような施設もありますが、高級であれば必ず真心のこもったサービスが受けられるという訳でもありません。

検索サイトで平均的な利用料金を調べると、東京都では月額30万円前後、地方では10万円以下でも利用できる施設が多いようです。

軽費老人ホーム

全国に2319か所あります。

内訳は、

食事提供ありのA型軽費老人ホーム191か所、

食事なしのB型軽費老人ホーム12か所、

食事と介護サービスが付くケアハウス型2035か所、

都市型軽費老人ホーム81か所。

圧倒的にC型のタイプが多く建っています。

A型とB型は経済的に一般的な有料老人ホームに入る事が難しい方向けの施設なので、世帯収入の上限などもあります。

食事や掃除などを自分で行なうことが難しい認知症の方向けの施設が多くなってきています。

ちなみに都市型軽費老人ホームとは、都市部を対象とした定員20人以下の小規模な軽費老人ホームで、所得により利用料金が設定されます。ある程度自立した生活をしておられる方向けですね。

軽費と言っても、いろいろ含めると10万円ほどかかる場合が多いでしょう。

最も費用が安いですが、それは介護士の質にも直結します。

サービス付き高齢者向け住宅

名称に「住宅」とあるように、主に自立した方向けの施設ですが、看取りまで行なう特養と同じような施設もあります。

費用は地域にもよりますが、一般的には12~20万円程度。

東京や都市部だと、月額30万円以上の高級サービス付き高齢者住宅もあります。

老人ホームの種類のまとめ

大きく分類すると

公的機関としての安く利用できる特別養護老人ホーム(特養)

民間企業が運営する費用が高めで待ち日数の短い有料老人ホーム

自立されている高齢者向けだが、特養と同じ対応もしているサービス付き高齢者住宅

費用が安い軽費老人ホーム

という具合に分けられるかと思います。

特に、有料老人ホームと特別養護老人ホームの違いは何度も書いていますが、運営しているのが公的機関の社会福祉法人か民間企業かというところ。じつは、この違いは従業員の人数やサービスの質にも影響します。

でも、実際に現場でいろいろなタイプの老人ホームで働いていると、ごちゃ混ぜになっている部分もあるので、上記はあくまでも目安とお考えください。

 

見学に行って働いている介護職員と入居者を見る

さて、いろんな施設名や介護度などが出てきたので、介護の世界に慣れてない方は何のことかさっぱり…。と思われるかもしれません。

介護保険の単位数や利用条件などの難しい話は置いておいて、ここからは実際に施設を見学に行った時の判断の仕方をお話します。

老人ホームのタイプごとにメリット・デメリットもあるんですが、別記事で書こうと思います。

今回、それ以上に注意したいのはスタッフの質です。

施設の質は現場で働く介護職という「人間」がすべて

例えば、あなたは今ネットのじゃらん楽天トラベルホテル選びをしているとします。

宿泊費の高いホテルもあれば、安く泊まれる宿もあります。

高いホテルなら、無条件に満足できるかというとそうでもありません。口コミを見ていると一流ホテルでも「がっかりした」という評価をよく見ます。

高級ホテルであれば部屋も豪華だし、食事も美味しいはず。

なのでそういう場合、たいてい設備にガッカリしたのではなくてホテルのスタッフの対応が冷たかったなど「人」が原因である事が多いのではないでしょうか。

介護士として断言しますが、老人ホームもホテルと同じで施設の設備やサービスの種類以上に、そこで働く職員の人間性が満足度に直結します。

どんなに高級で便利な場所にある施設でも、人間性の欠けた職員もいるし、逆に安い施設でも個性豊かで利用者さんに本当の家族のように接している介護士もいます。

宿泊して体験できればいいのに

老人ホーム選びが始まったら候補を絞り、見学に行って説明を聞いて分からないところを質問しますが、実際に泊まれるわけではありません。

体験学習のように、下見に行った家族が老人ホームの空き部屋に1泊して、他の利用者さんと同じように朝食を食べ、お風呂で入浴し、ベッドですっぽんぽんになって職員におむつを当ててもらってやっと、その施設の本当の姿が分かると思います。

でもそれは無理な話。

 

良質の老人ホームかどうか判断する最も確実な方法

どのサイトにも書いてないと思いますが、老人ホームに入居する利用者さんにとっていい施設なのか、そうではないのかを確実に判定する方法が1つだけあります。

それは、身近な人が実際にそこで働くこと。

老人ホームスパイ作戦

つまり自分か親族の誰かがそこでパートで働けばいいんです。

資格がなくても働ける施設もありますし、1~3か月で介護職員初任者研修というスクールに行けば、すぐにでも働くことができます。

(本来は有資格者でなければ採用できない施設でも、働きながら将来資格を取りますと言えばOKなことが多い)

もし、親戚に無職のぷー太郎君やフリーターでパートでも探している方がいれば、ぜひ勧めてみてください。

とはいえ、この老人ホームスパイ作戦も実際にはなかなか難しいでしょう。

となると、次の手段としては介護業界にいる介護士にその施設の評判を聞くのが有効。

知人かSNSの友達の中から介護職員を探す

介護業界は意外と狭いので、悪い噂はすぐに広がります。ケアマネと呼ばれるまとめ役はあちこちの施設に顔が効くし、施設から初任者研修や実務者研修などのスクールに通って介護職同士が知り合うことも。

また、介護業界は離職率がハンパなく高い業界でもあります。

人間関係が原因で施設を辞めて、違う老人ホームに転職するというケースが圧倒的に多い。

つまり異業種ではなく同業他社への転職。

みんな興味津々なので、転職するとすぐ事情聴取が始まります。

前の職場での給料や待遇・人間関係・経営者の手腕と人間性・残業の多さ・ハラスメント・高齢者への虐待・上司によるセクハラや性犯罪・経営者の不倫関係など、いろんなことを聞き出されます。

密かに自分も転職したいと思っている職員も多いので、そういった情報交換を通してアンテナを張り巡らすわけです。

誰でも人間関係が良くて給料が良くて残業のない老人ホームで働きたいですもんね。

でも実際には転職組からいい話が出てくることはあまりありません。良い環境の職場なら辞めたりしませんから。

なので、自然と前職の悪い話が出てくることが多くなるわけですが、このうわさが狭い介護業界で、あっという間に広がるので、ブラックな老人ホームはすぐに分かることになります。

残業が多いとか施設長が学校を卒業したての若手職員に手を出す等の軽いブラック施設であれば市町村単位での噂になり、利用者さんへの虐待や性犯罪、また家族が職員に忖度しないなど気に入らない利用者さんの口腔ケアなどを意図的に省いて誤嚥性肺炎を起こさせるなどの超ブラックな施設は都道府県レベルの噂になります。とはいえ、そういう施設は市町村の指導監査課と癒着していることが多いので野放しになっていますが…

誰か知り合いに介護業界に詳しい人がいないかどうか探してみましょう。また、口コミサイトは業者が在宅アルバイトにお小遣いを出して書かせたり自作自演のサクラが多くてあてにならないので、ツイッターやフェイスブックの友達の中から同じ町の介護職を探していろいろ聞くと良いでしょう。

老人ホーム検索サイトは施設側から広告料金をもらう営利目的なのであまり公平とは思えず、お勧めしません。

なかなか探せない場合は、SNSを開いて施設名を○○と入力してみて検索して、過去に何か書いている人がいたら友達になってみてから連絡してみるのも手です。施設のスタッフが書いている場合はいい事しか言わないので、家族をその施設に預けた方を探します。

 

確認するとよいところとは

知り合いの介護士やSNSで近所の介護士を探すことができたらネットでは聞けないような生の口コミを聞くと良いですし、それが不可能でも自分である程度、候補として考え中の施設の良しあしを判断することができます。

下にいくつか挙げるので参考にしてください。

全体的な施設の評判

まずは総合的に見ていい施設かどうか。正直言って、「この施設には自分の親は入れたくない」と思いながら働く職員は多くいます。あなたなら、身内をこの施設に預けたいと思いますか?と聞けばだいたい分かります。

介護職員の人間関係 

人間性が欠けた職員が集まれば人間関係も悪くなります。そういう老人ホームではストレスが溜まり、心のこもった介護が難しくなります。というか「モノ扱い」しています。

給料の良さ

地域差はあるものの、介護職の給料には相場があります。給料が低い施設は従業員を大切にしていないことが多く人件費を削ることが多いため、少ない人数で介護しなければなりません。

例えば、優良な老人ホームでは5人の介護職でする仕事量を2~3人でこなすイメージです。これも現場では大きなストレスとなります。

施設の名前

絶対条件ではありませんが、日本語名の施設がサービスも良いです。

英語で会社名や施設名をつける経営者もいますが、老人ホームの利用者さんの多くは大正時代か昭和初期の生まれです。

その年代の方に英語の意味が分かる方は少ないですし、利用者さんにとって分からない施設名を付けるとしたら経営者の目線での運営をしている可能性も高い。

○○園とか、○○苑、○○の家という施設名の方が、圧倒的に利用される方にとって覚えやすいです。

英語の施設名ではなく日本語の施設名が圧倒的に利用者さん目線で経営できる理由

たいてい老人ホームを経営する理事長や社長は別会社を経営していたり、資産のある60代前後の方が多いので、英語名のほうがカッコいいと思われるのかもしれません。

でも私が経営者なら、何を置いても入居される高齢の利用者さんでも覚えやすい施設名を優先して付けます。

ある意味で閉鎖された施設に入居される高齢者の方は、それまで自由だった人間関係が大きく制限されます。

コロナ禍では特にそうですが、施設にいると会いたい人に自由に会えないということです。

いうことは、家族や古い友人など外部に電話を掛けたり、手紙を出すことをとても楽しみにされています。

でも、自分の住んでいる施設名が英語名だったりすると、なかなか覚えられなかったり、ハガキに書くことさえひと苦労なんです。

英語名の施設で働いていると、よく利用者さんから「すみません、ここは何という建物だったでしょうか」と繰り返し聞かれます。認知症の関係もあるので和名の施設でも聞かれますが、回数は圧倒的に少ない。

それで、特別養護老人ホームを運営する公益性の高い社会福祉法人は、たいてい和名で○○会となっています。

当然と言えば当然ですよね。

こういうところでも企業としての考え方が現れるので、施設選びする材料にすると良いでしょう。

もちろん、フランス語などは論外です。

 

幾つか書いてきたら長くなってしまいました。

お話したいことはまだまだ山のようにあります。

これから介護業界の表や裏についての記事を書いていくので、読者登録などしていただけると嬉しいです。

また、コメントも心よりお待ちしています!

では、またお会いしましょう!

 

ポリフェノール

 

 

※この記事の内容は、あくまでも現場で働く介護士の個人的な見解です。様々な考え方があると思いますので、慎重にご自身の責任にて施設選びをされて下さい。

 

kaigoshi.hateblo.jp

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